Story

Case 04

2022年2月に開館し、多くの人を集めた展覧会や、芝生広場でのマルシェなど各イベントで注目を集める「大阪中之島美術館」。このプロジェクトに取り組んだメンバーのうち2人が、魅力ある美術館を開業するまでのストーリーを語りました。

日本全国で初めての取り組み

美術館でのPFIコンセッション方式から
開館後の運営まで

アートが息づく、新たなまちに

手探り状態で突き進んだ、前例がないプロジェクトへの挑戦

このプロジェクトの経緯について教えてください。

以前から趣味で美術館や博物館をめぐるのが好きでした。だから、このコンペの話を聞いたとき、直感的に「面白そうなプロジェクトだな」と感じ、挑戦しようと思いました。

公共施設の美術館を民間が運営するのは初の試みでした。不安はありませんでしたか?

とにかく、勝算がなかったので、コンペに参加する前、自分なりに美術館運営にどのようなノウハウが必要なのか分析してみたんです。大きく分けて、チケット販売、建物の維持管理、商業店舗の誘致、展覧会の損害保険、グッズ製作の5つのノウハウが必要だとわかりました。これらは当社でもノウハウがあり、要件は満たしているので、コンペの参加に踏み切りました。

そうですね。また、日時指定をはじめ、時間ごとに入場料金が変動するダイナミックプライシングを導入したことも高い評価を受けました。海外の博物館にもその仕組みがあったので、提案書に盛り込みました。

開館までは、どれくらいの期間が掛かりましたか?

提案書作成の準備期間を含めると、開館するまでに約3年です。参考にする事例がなかったので、多種多様な文献や資料をひもときながら、ひとつ一つの情報を手探り状態で集め、着実に進めていきましたね。

新たな取り組みや企画を打ち出し、開館から1年間で約55万人の動員数を記録

開館から1年を過ぎ、率直な感想はいかがですか?

国内有数とも言われる近代・現代作品とデザインを約6,000点も所蔵し、関西にゆかりある作品も多いため、それを活かした個性ある美術館となりました。

オープニング展覧会となった「Hello! Super Collection 超コレクション展 -99のものがたり-」では、これまでに所蔵した6,000点を超えるコレクションから約400点の代表的な作品を選び、全展示室を用いて一堂に公開。コロナ禍のなか日時指定制予約優先としたが、来場者数は約12万6千人となった。

その価値をさらに高めようと、運営面でも力を注いでいます。ただ、業務内容の幅広さには驚きませんでしたか。

チケット販売、来場者様のご対応、施設内ホールの貸し出し、入居する店舗の誘致・管理など、確かに多いですね(笑)。また、課題として、来場者の動員を確保していくというものがあります。

これは、目の前の運営業務をきちんとこなしていくこと。それと、学芸員の方々に魅力的な展覧会を企画していただくことを堅実に進めるしかないですね。

印象に残った企画について教えてください。

「展覧会 岡本太郎」のときです。前売券がすぐに完売し、わずかな当日券を求めて行列ができ、対応したことが印象に残っています。

展覧会 岡本太郎

芸術家の岡本太郎が、若き日にパリで描いたとされる初公開の絵画など、希少な作品も含む約300点を集めた展覧会。約16万3千人の来場者を迎えた。
©岡本太郎記念現代芸術振興財団

大きな反響を得て、お客様対応やチケットの売上管理などについて想定外な出来事もありましたが、トライ&エラーで成長していき、開館から1年間で約55万人もの動員数を記録しました。

時代のニーズを取り入れながら、常に進化し続ける美術館へ

今後の展望についてお聞かせください。

改めて思うのは、魅力ある美術館には動員を見込める企画だけではなく、その力を最大限に引き立てる運営が重要だということです。

私もそう思います。その思いから、当館では日本の美術館でも希少な販促活動にも積極的です。「この美術館を知ってほしい」という一心で取り組んでいます。

日本初のPFIコンセッション方式の美術館ですから、手本となるモデルがない。だから、時代のニーズを柔軟に取り入れながら、徐々に進化を遂げる中で、当館の価値を次の時代に繋げられたら何よりです。遠くの展望ではなく、次の1年に向けて着実に歩みを進めていきましょう。

上田統括マネジャーから

この美術館は中之島の顔のひとつでもあります。展覧会のみならず、来館する皆様を常に快適な状態でお迎えする建物でなければなりません。その意味でも、当社が積み上げてきた施設管理や空間演出のノウハウを最大限に活用する絶好の場と感じています。